「上司が壊す職場」見波利幸(著書)は、職場を壊す上司像について語った本。職場に影響力の強い「権力者」の存在がある場合、マネジメントスキルと上司自身のキャラクターのいずれか、あるいは両方に問題を抱えているケースがほとんどです。スキルは磨けば向上します。しかしキャラクターはなかなか変えられません。組織運営に適性のない人を管理職にすることは、部下にとってはもちろん、上司本人も不幸にします。
壊れた職場があれば、まず「上司の存在」を疑う。カウンセリングを通して感じるのは、仕事そのものへの悩み以上に、職場内における「人間関係」の問題によって不調になっている人が非常に多いということです。相談を受けた場合、その原因としてまず考えるのは、その部署の上司-部下関係に問題、があるのではないか、その部署を統括する上司に問題があるのではないか、といった点です。ほとんどのケースで私の推測は当たってしまいます。上司の立場にいる人が職場を壊していても、さらに上位の役職者の目に届きにくく、放置されやすいため、なかなか解決に結びつきません。上司が原因で起こる問題は、具体的に、上司が、適切なマネジメントの方法論を正しく理解して、身につけていないために起こっている問題です。また、上司自身の特性、つまりキャラクターに偏りがあるケースです。上司本人に問題意識がないのですから、まずは問題を意識してもらうことから始めなくてはいけません。問題上司は、一方的に話し続ける、追加で質問しようとすると、それをさえぎって自分の話を続けようとする、攻撃的な言葉を多用するなど、明らかに一般的な管理者の方とは違っているのです。危険な上司は、たいていの場合、自己本位、自己中心的な性向を示すので、周りの変化に鈍感な人が多いのも特徴です。
部下の感情がくみ取れないーー機械型問題上司。周囲との関わりが希薄で部下との人間関係がうまく築けない、自分の興味のあることしかやりたくない、まったく融通が利かない。チーム運営に関する段取り、ができないために、仕事そのものを部下に「丸投げ」することで責任を放棄するケースもしばしば見られます。考えや行動が改善しにくい上司への対応は、部下が「うちの上司はそういう人」と割り切って考えることをお勧めしています。
職場には「敵と味方」しかいないーー激情型上司。激情型の人は感情の起伏が激しく、自分でコントロールができないタイプです。さらに「機械型」とは違った意味で、人の好き嫌いが激しいのも特徴です。激情型の上司も、機械型と同じように、怒りの原因がどこにあるのかがわからない、という面で対処が難しいのも特徴です。激情型の上司にはどのような特徴があるのでしょうか。端的なのは、いったん恨みを感じると、徹底的に相手を攻撃するということです。激情型のケースでも、やはり部下側に対応できることには限界があります。激情型の人をマネジャーにしておくことは、部下にとって、会社にとって、さらには上司本人にとっても不幸なので、会社側は組織として、必要な人事上の判断をくだすしかないと思います。
「自分は優秀」をアピールし続ける人々ーー自己愛型上司。「自分は有能だ」というアピールをすると同時に、部下には同意を求め、一方で大切なクライアント、さらには社内の他部門を貶めるような発言を繰り返すので、部下の信頼も失った状態でした。このタイプの上司は、総じて自己評価と他者評価のギャップが大きく、そのうえで他人から注目を集め続けたい、「あの人は有能だ」と特別視され続けたい、という意識が非常に強いのが特徴です。自己愛型は、とにかく周囲から賞賛されたい、特別視されたいという願望が強いため、自分の能力を直接的に賞賛してくれる部下がいると、ことさら可愛がる一方で、少しでも反抗的な部下は攻撃する、といった特徴があります。
部下は、自分の出世の道具ーー謀略型上司。H氏は私に対しては、大変殊勝な態度で接してきました。私の言葉にも真剣な表情で耳を傾けます。この人は、最も危ないタイプの上司ではないのか。上司の中には、支配欲や権力欲がとても強く、結果のためには手段を選ばないうえ、相手の気持ちには関心がなく、自分のせいで部下がつらい目に遭っても良心が痛むことがない、という人がいます。謀略型の上司も自己愛型同様、その仕事が自分の評価のアップ、あるいは評価ダウンの防止に必要だと判断すれば、部下がどれほど大変な状況にあっても、現場に確認せず仕事を請けてきます。ただし、自己愛型が現場を考慮せずに請けるのに対し、謀略型は、現場の能力を考慮したとして、「部下が無理をすれば完遂可能だ。部下が精神的・肉体的に、どれほど大変な目に遭おうと、自分には関係ない」という意識で請けてしまいます。このタイプの上司にとっては、その仕事を請け負うことが、「自分の成果・評価」につながるかどうかだけが重要なのです。謀略型と優秀な上司を分けるのは、どのような違いなのでしょうか。端的に言うと、「上だけを見て行動をしている」のか、あるいは「下もきちんと見て行動している」のか、という点に最も違いが表れます。
「危険な上司」は変われるのか。 危険な上司の共通点は、「他人の気持ちに思いをはせられない(思いをはせない)」という部分が挙げられます。これは無意識か、意図的かを問いません。無意識の極限にあるのは「機械型」で、意図的な部分が最も強調されるのが「謀略型」です。次の共通点として挙げられるのが、みな「自己中心的」であることです。ここまで紹介してきた4つのキャラクターの人は、単に「上司」という仕事には向かないだけであって、それぞれの特性に合う仕事は、何かしらあるはずです。
これを読んで思う事は、上司にしてはいけないタイプの4つは、必ずしも明確に4つに分かれていないという事。つまり、混合型が有り、しかもそれぞれがグラデ-ションを持っているという事だ。そこにもう一つ付け加えたいのが、部下として下から見なければ、評価できないと言う点だ。上にゴマをすり、同僚に良い顔をする。あっぱれと管理職に据えるが、部下から見ればとんでもない人事と言う事が起きるという事だ。しかも、しばしばそうした事態は起きる。理想の人事は、仲間から持ち上げられる人事だと思う。それに対して、前任者やお偉いさんが、彼を推薦するなどと言うのは、当然にして旨く行かない。サラリーマンの10人がいれば、その10人が部下だった経験を持っている訳で、定年まで上司に恵まれたなどと言うのは、あり得ないだろうと思う。自分も部下として、ああ、あの人だと、そうした経験を持つし、自分自身も、その意味では、危険な上司だったかもしれない。さて、その場合は、どの類型かななどと考えてしまう。なるほどなぁ~、と思わせる本でした。