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タイトル  武器としての決断思考
本文  
「武器としての決断思考」瀧本哲史(著書)は、「人間を自由にするための学問」と言う事になる。この本は、著者が京都大学で二十歳前後の学生に教えている「意思決定の授業」を一冊に凝縮したものだそうです。変化が激しい今の時代、これまでの価値観や方法、人生のレールというものは、意味をなさなくなってきているということです。右肩上がりの「幸福な時代」は過ぎ去りました。良い大学、良い会社に入れば人生は安泰、みたいなことはもうないのです。さらに断言すれば、これからの日本はもっともっと厳しい状況になっていきます。国家試験に合格しただけでは、これからの時代は生き残れないし、幸せになることもできません。むしろ奴隷として、上の世代が作ったシステムにからめとられる可能性が高い。それも、自分か気づかないうちに。自分にとって必要な学問は何かと考え、探し、選び取るーーそういった行為が、ベーシックなものとならなければなりません。

知識・判断・行動の3つがセットになって、はじめて価値が出てきます。たとえばあなたが会計学を学んでいるとするなら、簿記何級を取ったとか、決算処理ができるというレベルで満足してほしくないのです。そういう人間はこれからの時代、担当Aとして、会社の都合の良いように使われるだけで、自分の人生を自分で切り開くどころか、会社の業績次第では真っ先にクビを切られます。知識・判断・行動のすべてをセットでこなすことのできる、交換不可能な人材の姿です。「エキスパートではなくプロフェッショナルにならなくてはダメだ」ということです。要は、相手の立場に立って、相手の代わりに考えてあげることができるのです。そしてそのためには、横断的知識・経験が必須のものとなります。これからの時代における最大のリスクは、「変化に対応できないこと」です。

議論を行ってものごとを決めていく。それがディベートです。基本的に正しいことはなんだかよくわからないから、議論を通して「いまの最善解」を考えていこうよ、ということです。議論によって意識的に違う視点、複数の視点を持ち込み、ぶつけ合うことで、「いまの最善解」を出すことができるようになるのです。反論が出てきたら、その反論に対してきちんと答える。話を逸らしたり、詭弁でごまかしたりしないのが、議論の最低限のルールになります。4つの大きなルールを説明しましょう。これはディベートを行う際の根本的なルールであり、議論全般に対しても守られるべきルールになります。①特定の論題について議論する ②賛成側と反対側に分かれる ③話す順番、発言時間(制限時間)が決まっている ④第三者を説得する ディベート思考とは、最終的にはディベートを個人ひとりの頭の中で行うことによって、いまの最善解を出していく思考法になります。問題を分析する手法にはいろいろなものがありますが、正式なディベートでは、「リンクマップ」というものを作って考えていきます。大きな問題から生じる要素を洗い出し、それらをつなげていく(リンクさせていく)ことで、争点をしぼるのです。何か大きな問題について考えなくてはならないときは、問題を小分けにして、同時に2つか3つの「議論すべき論題」について考えていけるように習慣づけてください。

どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する。日本人にありがちなのが、比較という考え方がないので、デメリットばかりに目がいってしまって、なかなか行動を取れないというパターン。具体的なディベートでは、賛成側はメリットを提出して、それが反対側のデメリットを上回ることを主張します。反対側はその逆で、デメリットが賛成側のメリットを上回ることを主張することになります。メリットの3条件①内因性(なんらかの問題があること)②重要性(その問題が深刻であること)③ 解決性(問題がその行動によって解決すること)デメリットの3条件①発生過程(論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)②深刻性(その問題が深刻であること)③固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと)

外国人はよく(私はあなたの意見に反対だ)という言い方をして、相手の意見が間違っているということを論理的に否定しますが、日本人がこれをやると、「生意気だ」「人格を否定された」と相手に思われてしまいます。反論は、メリットーデメリットの3条件に対して行う。相手が挙げるメリットの3条件に対して、それぞれ「そんな問題はそもそもないのでは?」「問題だとしても、たいした問題ではないのでは?」「重要な問題だとしても、その方法では解決しないのでは?」などとツッコミを入れることができれば、反論になります。

これを読んで思う事は、この本は、ディベートの説明本だったという事だ。本のタイトルは、決断思考となっているが、中身は、ディベートのやり方、準備の仕方、突っ込みなどの内容が具体的に書かれている。それを一人の人の頭の中でやれば、むろん複数でも構ないのだが、決断できるではないかと言う事になる。間違ってはいないし、良い方法だと思うが、馴染みが無いので、相当な練習が必要になるのだろうと思えてならない。ディベートと言っても、そもそも日本では、そうした事への馴染みは無いし、馴染みが無ければ、ディベートで必要となるルールが守られる事もないだろう。結局、自分一人の頭の中で、決断する前に、考えるツールとして、ディベイト形式をとるという事になりそうだ。やはり、訓練を積まないと、出来そうもないな。


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