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タイトル  議論に絶対負けない会話術
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「議論に絶対負けない会話術」清水勤(著書)は、一言で言えば、コミュニケーションのノウハウ本である。社会の価値観と人びとの意識の変化が急激に進んでいて、人と人との問で”話か通じない”、”議論がかみ合わない”事態が起こり、紛争が絶えない。昔のようなど”心をこめて話せば必ず通じる”などということは時代遅れとなり、いまでは、論理的な話術がますます重視されるようになった。しかし、最近では、論理のいきすぎに気づいて、感情(ココロ)に支えられない理屈は人を動かすことができない、ということが再確認されるようになった。

言葉は、それを相手がどう受け取って、どんな意味づけをするかを考えて話さなければならないこと。相手の言葉は、相手がその言葉によって何を伝えようとしているかを、自分の見たいように歪めないで受け取るように努めなければならないこと。これはスムーズな会話の原則である。問題解決というものは、人の感情をよく理解しながら、一方では事実に基づいて論理的に解決策を見つけていかなければならないものだ、ということが示されている。ココロとアタマをつかうのだ。時代は、はっきり自分の考えを説明して、人を納得させなければ、理解されないし、動いてもくれない世の中になってきた。

「やりとり分析」を利用する。P:「親のような」心の状態。A:「成人のような」心の状態。C:「子供のような」心の状態。大切なことは、「人は自分とは違う。人さまざまだ」「人を変えようとするより、自分か変わるほうがてっとり早い」の二つの原則を実行することである。黙々と作業する「部下」よりも、お世辞を言った「部下」のほうの業績評価をよくしていたし、昇給額も多くつけてきた。そして興味深いことには、お世辞を言わなかった「部下」と、言った「部下」との昇給額の格差を見ると、最初に調べた「パワー欲求」の強さと比例して、パワー欲求の強い者ほど大きい格差をつけていたのである。

理屈だけでは人は納得しないというが、最近の若者は理屈がわかると動いてくれるのだ。理論的に自分の主張を説明して相手を納得させるには、議論の組み立て方の原則に従わなければならない。議論の三角形で相手が反論してきたら、三角形の一角でよいから、つき崩してやればよい。「事実」(証拠)、「論拠」および「主張」(結論)のどれでもよいから、否定するのだ。論理のスジを追って矛盾を見つける。議論の相手として不適格だ、と言って気勢をそいでしまうやり方だ。

議論の三角形の各要素を突いてくるなら、真正面から切り返すことだ。全体の論理のスジに対しては何も言わないで、細かい部分をつついてきた場合だ。欧米での論文の評価は全体の構成がしっかりしていて、そのうえ独創的なものが高く評価されるといわれる。日本は逆で、部分に矛盾や誤りがあると評価が悪くなるそうだ。日本ではこの方法でこられると弱い。言葉尻をつかまえて言いがかりをつけてくる場合がある。一種の攪乱戦術である。それで相手を混乱させて、自分の言い分を呑ませようとするのだ。巧妙な論客は、自分の胸のうちに反論をもっていて、それの裏付け情報をとるために質問攻めをかけてくることがある。時間がたつと議論は堂々めぐりになりやすい。どんな議論でも、二時間続けるとそうなるとみてまず間違いない。みんなが、最初のほうをドンドン忘れていって、何回もむし返すからだ。

世の中には、人をいじめて快感を覚える人がいる。それは決して特別変わった人ではないのだ。誰でもいじめ人間に変身する。

これを読んで思う事は、議論には、論理が必要だが、そこに感情をこめないと人は納得しない。その対象は、年齢を重ねた人には、感情を厚く、若い人には、論理を明確にと言う事らしい。また、日本人に対しては、大きな論拠よりも、こまかなどうでも良い事と思う事で、言葉尻をうまくやれという事となる。日本人のそうした事は、仕事の実績よりも優先評価されると言うのだから、今更遅いと思うのだが、気を付けねばとなる。長い人生、周りを見れば、思い当たる事例に確かにぶつかる。サラリーマンの参考書と言ったところでしょうか。
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