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タイトル  仕事力ある人の運動習慣
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「仕事力ある人の運動習慣」吉田たかよし(著書)は、冒頭、目次には、「脳トレで脳は鍛えられない」とあり、それが目を引く。脳トレへの誤解は、この本ばかりでなく、何冊かの本で読んだ。テレビに出て来る有名人の嘘八百を盛り込んだ本と違って、それなりの事を伝えようとしている本だという事で、読み進める事にした。

脳に対する効果を脳トレと全身を動かす運動とで比較すれば、明らかに運動のほうに軍配が上がります。脳トレの効果を証明した研究は、「脳トレの結果、脳の幅広い領域で血液の循環量が増えた」といった、脳機能の向上にとって間接的な変化を証明しただけである場合が大半です。脳機能の向上をダイレクトに実証しているわけではありません。それにくらべ、運動は、脳機能に与える効果がかなり明確に、しかも直接的な形で証明されています。こうした論文は、今、次々と発表されていて、専門家であってもとても読みきれる量ではありません。運動が得意ないわゆる体力のある子どものほうが成績は良い傾向にある……。こうした事実を浮き彫りにした調査研究が、今、数多く発表されているのです。運動への取り組みで、生徒の能力が顕著にアップしたと報告しているのが、読解力と論理的思考力です。面白いことに、年齢が高い人のほうが「運動が得意な子どもは勉強が苦手だ」という先入観が強く、若い方は「運動ができる子どものほうが、頭がいいのは当たり前だ」という意識が強いようです。

運動と知的能力の関連の研究で、スウェーデンのイェーテボリ大学のマイケルーニルソン教授らが発表したものは、桁はずれの122万1727人なのです。かつてスウェーデンでは徴兵制があり、検査項目は一般的な健康診断だけでなく、運動能力についても詳細に調べられていたのです。さらに、兵としての適性を知るため、IQテストも行われていました。IQテストの成績と相関が認められたのは、「心臓血管能力」です。とりわけ論理的知性と言語的知性については、「心臓血管能力」の高さと強い相関が見られました。「心臓血管能力」が高いと軍隊を除隊になった後も学歴が高く、また学術教育分野や経営者、それに高額の給与所得者だと考えられる職業についている割合も多いことがわかりました。遺伝は10%から14%に過ぎず、79%から87%が環境因子だという結論でした。筋肉の強さとIQテストの成績との間には、はっきりとした相関は見られませんでした。数多くの研究結果から「心臓血管能力」を鍛えるのに最適だと考えられるのは、マラソンなどに代表される有酸素運動です。有酸素運動は血液で運ばれる酸素を使って、長時間にわたり筋肉でエネルギー源を燃焼させる運動です。つまり有酸素運動は「心臓血管能力」をダイレクトに高めるエクササイズだと言えます。

運動の効果が最も明確な形で証明されているのは、記憶力です。運動、特に有酸素運動によって脳の記憶力が高まる現象は、世界中でかなりの数の研究が報告され、その効果は今や否定しようがありません。ネズミを利用した実験を通し、運動で記憶力がどのようにして高くなるのか、その具体的な道筋についても明らかになってきています。カギを握っていたのは、BDNFと呼ばれる成分です。ネズミを活発に走らせた場合は、走らせないネズミに比べ、このBDNFの量が脳の中で大幅に増えていることが、実験で確認されています。中でもBDNFは、脳の中で海馬と呼ばれる記憶力を作り出す中枢の部分でとりわけ活発に生成され、神経細胞の成長に大きく寄与しています。被験者の方に3ヵ月間にわたって有酸素運動であるエアロビクスを行ってもらい、その前後で計測した機能的MRIの画像を比較する研究が行われました。その結果、マウスの場合とまったく同じように、海馬の歯状回と呼ばれる部分で運動によって活動が高まることが分かったのです。運動を怠れば、体内では血糖値が上昇しやすくなりますが、この血糖値の乱れによって、記憶力や認知能力などの脳機能が低下してしまうことが、最新の研究によって明らかになってきたのです。つまり、血糖値こそが脳機能を維持するためのカギを握っていたというわけです。血糖値はこれまで、主に糖尿病の予防や治療のために研究が行われてきました。しかし最近になって、血糖値が上がったら記憶力が悪くなるという研究結果が発表され、専門家の間で注目を集めています。最近になって、糖尿病の患者がアルツハイマー病になりやすいプロセス自体も、次第に明らかになってきました。アルツハイマー病が糖尿病と同じように、運動や食事によってある程度は予防ができるという事実をしっかりと認識できるということです。高齢になって発病するほとんどのアルツハイマー病は、運動と食生活で、かなり予防できるというのも明白な事実なのです。超えてはいけない一つの目安として体脂肪率25%を念頭に、しっかり運動を行って肥満を予防していただきたいと思います。

運動をした後は脳内のホルモンや神経細胞の状態が学習を行うのに最適なコンディションになっていることが分かっています。休み時間に行うべきことは、身体を休ませる事ではなく、むしろ身体を使って身体の疲労を精神の疲労と合わせる調節を行うことなのです。休み時間の使い方として最も望ましいのは、体操など全身運動を行うことです。歩数を数え上げるのは至難の業です。そこで、歩数計の利用をおすすめしているのです。1日にトータル30分で3000歩、これを週5回繰り返せば、健康を保つ上で十分な運動量が確保できると考えられています。朝の運動が最も望ましいというのは、1日の体温のリズムの点からも断言できることなのです。日中、しっかりと体温が上がれば全身の代謝が盛んになり、身体も脳も活発に働いてくれます。一方、夜はといえば、体温が十分に下がってくれれば、深い眠りにつくことができます。血糖値をコントロールする上で最も運動を始めるのに適した時間帯は、食後30分が経過したあたりからです。

これを読んで思う事は、一日の体温リズムと、運動のタイミングをうまく組み込む事が、必要だという事。運動は、食事前は、厳禁と言う事。具体的に、どうすれば良いのか、著者としての意見が書かれている。なかなか説得力のある話だと思う。会社に居た時には、朝食は取るなとか、そんな健康法が健康保険組合の紹介で進められた。私も参加したが、その医学博士が、鼻水をすすっているのを見て、即座に止めた。そんな健康法を熱心に続けた3人は、今はこの世に居ない。世の中には、偉いお医者さんの先生と言う触れ込みで、幾つもの健康法が有るが、結構、前唾ば物が多い。そうした物を漁り読んだ中では、まともな本だと言えそうだ。この本のお勧めの幾つかは、すでに実践しているが、今やっている事に、改良を加えるヒントを頂いたと思っている。健康、特に脳機能と来れば、読んで損はないと思う。
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