記事の個別表示
タイトル  レーザーカッターでプリント基板を作る
本文  
今回は、レーザーカッターを使ってプリント基板のマスクを作成してみる。「久々にZ80のプログラムをいじった、 その4」では、ドライフィルムを使ってプリント基板を作って見た。反省として、ドライフィルムをラミネートする時、空気の泡が混入してしまい、歩留まりが悪かった。空気の泡対策には、様々な方法がネット上で紹介されているが、たぶん、どれも難しいのだろう。フィルムの感触から、洗濯ばさみで4隅をつまんで、その状態で下に置いたPCB基板にゴムスキージーでラミネートする方法が良いと思うが、試していない。それより先に、レーザーカッターを使ってプリント基板のマスク作成を試す方法が先になってしまった。それを紹介したい。

まず、レーザーカッターだが、Amazonで「WAINLUX レーザー彫刻機,10W レーザーカッター レーザー加工機 レーザー高出力 0.05mm高精度 12000mm/min彫刻速度」が「ハニカムパネル WAINLUX 445x445x20mm」付きで44,990円のキャーンペーンを行っていたので、これを買った。プリント基板の塗料を焦がすだけなら、10Wは必要ないと思うが、別用途でも使うので、これにした。



プリント基板は、「Aoje-Link片面銅張PCBラミネート回路基板、FR-4グラスファイバー、 150 x 100 x 1mm」で、前回使った物と同じだ。

黒の塗料は、「つや消し アクリルスプレー」を使う。




CADは、KiCADではなくて、今回もPCBEを使う。PCBEから「版下印刷」を選び、「ネガ印刷」、「プリンター設定」では、「CubePDF」というアプリを使った。CubePDFは、プリンタードライバーとして働き、出力先を画像ファイルにすることが出来る。印刷時、一般タブで、ファイルタイプを「PNG」、解像度を「300」に設定して「変換」ボタンをクリックする。出来上がった画像ファイルをペイントで開き、必要な部分だけを選択して画像ファイルを作り直す(必要な部分を選択、コピーして、別のペイントを立ち上げ、コピーする)。

LaserGRBL v5.40 を立ち上げ、画像ファイルを読み込む。B&Wにチェックを入れ、Qualityは、8位で良いと思う。大きな数字ほど良いと思うが、時間との兼ね合いと考えれば良いかも知れない。Directionは、Diagonalを選択した。次に「Next」ボタンで進む。出力を25%に設定して(10W機なので、正しければ、2.5Wと解釈できる)、Autosizeにチェックを入れ、画像のDPIに合わせる。Offsetを適当に定める(これを設定しないと、「Hard limit」のエラーで止まる)。私の場合は、5mmとした。





出力の25%は、機種の違いによって、調整が必要かもしれない。10W機の25%だから、2.5Wかも知れないし、実は、出力の%は、目安であって、実際は、その通りではなく異なる事も考えられるからだ。25%にした訳は、10Wではやり過ぎだと思い、半分の5Wで試した。すると、火ぶくれが生じてしまったので、さらに半分にして、25%とした。厳密な意味で、ちゃんと最適化した数字ではない。

 5Wでも火ぶくれが発生した


 また、分かるだろうか、光が通るはずもない銅箔が光を通している。うっすらと裏側からパターンが見える。


 10Wで行ったら、ビームが広く成ってしなった様だ。


 25%で行った直後。パターンを部品側と銅箔側で、反転するのを忘れた。


出力が終了したら、プラスチック消しゴムですすを落とせば、出来上がり具合をその場で確認できる。エッチングに入る前には、表面を液体クレンザーで綺麗にしておくのが良いと思う。今回は、パターンの製作までを試みて、エッチングに進まなかった。

 プラスチック消しゴムですすを取り除いた所。


 出来上がったパターンの拡大写真(線幅は、0.8mmとした)






レーザーカッターの一般的な話だと思うが、LaserGRBLが動作中は、塗料の焦げた煙が発生するので、部屋の換気に注意する事。思わぬ発火が有ると行けないので、無人での操作としないこと。サングラスを掛けて、目の保護に注意する事など、安全を第一に作業を進める事が大事だ。




振り返り
1.PCBEからの出力時、「Microsoft Print to PDF」を選んだ時、うまく実寸と大きさを合わせられなかった。PCBEから直接プリンターに出力すると、実寸に合う。所が、PDFファイルを経由すると、大きさが若干小さくなってしまう。仕方なく、「CubePDF」というアプリを経由する事にした。LaserGRBL側の解像度が、ディフォルトで300DPIなので、それを基準に画像ファイルを作る。

2.LaserGRBL側の設定でQualityを8にしたが、出力時間との兼ね合いで変更すると良いだろう。8にした訳は、ディフォルトの4のままだと、パターンが残ってしまうので、倍の8にした。確認していないが、ここを増やせば、時間は掛かるものの、出力されるパターンは、綺麗な物になると思う。

 Qualityを4にした時。細かいパターンが残ってしまうので、単純に倍の8にしたが、細かいほど良くなるはずだと思う。

3.10Wのレーザーカッター機を使ったが、出力設定を25%としたので、もしかしたら、3W出力の安価な2万円台のレーザーカッター機でもプリント基板が作れるかもしれない。試した記事がWebの検索に出て来る事を期待したい。また、出力を50%とした場合、プリント基板に火ぶくれが発生してしまったが、国産の手持ちの基板では、火ぶくれは起きなかった。

4.ドライフィルムとの比較では、レーザーカッターに軍配が上がる。良い点は、何と言っても歩留まりが良く、確実だという事だろう。これなら、そこそこ大きな基板も、両面基板の製作も、可能と思われる。両面基板に場合は、位置合わせが重要なので、何か特別な工夫が無いと、行けない。機械屋さんから聞いたのだが、何かのガイドにぶつければ、50ミクロン程度の精度は出ると言う。そこまでの精度は必要ないが、L字冶具を作るなりして、位置合わせが出来れば、可能だと思える。

5.今回のパターンは、0.8mmで行ったが、工夫すれば、さらに細い配線で行えそうだという事が分かった。特に、出力をHorizontalなどに設定して、横だけを細かくするなど、回路を工夫すれば、ピン間に2本のパターンを通すことも可能だろうと思う。もっとも、そこまでやる必要が有るかの問題だと思うが、可能性としては、言えそうだ。

6.ドライフィルムの泡問題解決よりも先にレーザーカッターが来てしまった。個人的には、これで基板製作は、決まりだなと言う事でピリオドとなりそうだ。今は、両面基板に挑戦したいが、どんな治具を考えればよいか、それもまた、工作の楽しみになりそうだ。

12345678910...